dramatic diary

ドラマ、映画、小説のいいところ

熱いけど3人称ぽく少し引いたドラマ 「重版出来!」

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火曜ドラマ『重版出来!』|TBSテレビ

 

万年2位のマンガ雑誌編集部を舞台に、黒木華(はる)さん演じる黒沢が個性の強い漫画家と、会社につきものの大人の事情に振り回されながら成長していくお仕事ものドラマ。

 

かなり楽しめました。歴代ベスト10に入りますね。

 

目線主役は編集、ストーリー主役はマンガ家

 

前向きで、なんでも楽しんで突進する黒沢が、持ち前の明るさと根性でトラブルを乗り越えて行く、と書くと根性モノのように聞こえますが、実際にはその体裁をとりながらのクリエイターものと言えます。

 

制作側は創作の苦しさとか楽しさを描きたかったんだろうと思えます。

 

というのは、目線上の主役は黒沢であり編集部なのですが、ストーリー上の主役、物語の核になるのは、マンガ家側で、主人公は話から消えてしまっている回もあります。

 

 これ、編集部のメンバーのキャラをもっと立てて、マンガ家側を受け役にすることもできたと思うので、マンガ家をストーリーの主役にするというのは、意図されたことでしょう。

 

それだけあって、マンガ家たちはキャラが立ってます。

 

純文学のように心に湧いた映像をマンガにする、絵の下手な中田伯(永山絢斗さん)、そして人柄はいいが自分の才能に疑問を感じているアシスタントの沼田渡(ムロツヨシさん)の二人は特にいいですね。

 

そういえば、主役の黒沢のことよりも、中田や沼田のほうが人物像が描かれています。家族のこととか、どういう生活をしているかとか。ハリウッド系の脚本術の本で、「ラウンド・キャラクター(その人の全体を描く)」と「フラット・キャラクター(その人のある一面を描く)」という言葉が出てきます。主役をラウンドで描いて、脇役をフラットに描くのが普通ですが、このドラマは逆ですね。沼田の部屋とか食べてるものは知っているけど、主役である黒沢の部屋は知りません。

 

こういう描き方をして、でも黒沢が主役だと感じさせるには、かなり綱渡り的なつくりが必要だったことと思います。

 

最終回のラストのクライマックスも黒沢の話ではなくて、小日向文世さん演じるマンガ家の三蔵山先生のスピーチでしたし……。このスピーチが良くて、もっと年取ったら、このスピーチ盗もうと思いました。いいです、10回ぐらい見ました、このスピーチ。

 

1人称で抱きつくか、3人称で握手するか

 

この作品を見ていると、同じマンガ業界を描いたドラマで、「アオイホノオ」を思い出しました。

 

アオイホノオ」は、テレビ東京系の連ドラで、なんの実績もないのに自分は天才だと勘違いしまくった漫画の卵が、周りにどう思われようが関係なく突っ走る話です。あの作品も面白かったです。

 

が、超自分目線で客観性ゼロの1人称ドラマだったので、最初は爆発的に面白かったものの、多少中盤から飽きを感じることもありました。

 

そう考えると、この「重版出来!」は、話の主役はマンガ家なんだけど、目線の主役は編集者、という構図で、3人称的で、少し引いたつくりになっています。3人称なので、描く人を変えられるので、それで興味が続きやすくなっていたんでしょう。

 

まぁ、「アオイホノオ」の初回、2回目あたりの吸引力にはものすごいものがありますが。初対面なのに思いっきり抱きつかれたような唐突感とパワーがありました。

 

それに比べると、「重版出来!」は握手ですが、長く続く温かい握手です。

 

ナレーションってどう思われているんだろう?

 

見ていて気になったのは、ナレーションがけっこう出てくること。主役の黒沢のナレーションはなかった気がしますが、オダギリジョーさん演じる先輩編集者(めちゃくちゃカッコイイ)や、松重豊さん演じる編集長の心の声がナレーションでちょこちょこ、しかも結構重要なシーンで出てきます。

 

ナレーションが始まると違和感を感じる私としては、気になりました。絵で見せてよ、という。たとえば9話で、オダジョーが夜道を歩きながら「妻に捨てられたとき~~」のようにナレーションが入るんです。これはその後のオチの大事な前振りになっている重要な部分なので、妻に捨てられたときの光景をフラッシュで見せるとかしてほしかったです。

 

そうしようと思ってたけど、予算と時間という大人の事情で、なのかもしれませんが。

 

でも結構ほかのドラマでも心の声ナレーションを耳にしますから、あまりみなさん気にしないのかもしれません。どうなんだろう?

 

このドラマとは関係ないですが、今までで一度だけ、心の声ナレーションで「やられた」と感動したことがありました。細部は忘れましたが、10年ぐらい前の「シティボーイズ」の公演(ライブと言うのかな)でした。

 

大竹まことさんが1人で困っているコントで、暗転すると舞台右上にスポットがあたり、キューピッドっぽい衣装を来た斉木しげるさんが立っていました。「これは主人公の心の声だな、なんて言うんだろう」と楽しみにしていたらいきなり、「こんにちは、私は心の声です」とハイテンションで叫んで、主人公の心をベタにしゃべり出しました。

 

会場全体が大爆笑で、あれには完全にやられましたね。

 

 

 

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