dramatic diary

ドラマ、映画、小説のいいところ

「ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子」 第1話

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NHKの朝ドラ「あさが来た」で人気を集めた、波瑠さん主演の刑事ドラマ。

殺人者が人を殺すことになるスイッチを探す新人刑事・比奈子を主人公に、猟奇殺人を犯す異常犯罪者を追う、サスペンスタッチのミステリーで、被害者の死体がエグく、ホラーも入っています。

その手の映像がダメな方は目をつぶる時間が長そうな第1話でした。

 

主人公に感情移入させない新しい手法!?

2時間スペシャル(正味は1時間半)と映画ぐらい長かったですが、とても楽しめました。

一番興味深かったのは、主人公のキャラクターです。

比奈子は血だらけの殺人現場でも落ち着いていて、笑顔を見せたりします。仲の良い親友の死体を前にしても、楽しそうに見えるぐらいです。

一般的にドラマは、主人公に感情移入してもらい、主人公と一緒に笑ったり泣いたり怒ったりするのを楽しむという、シミュレーション・ゲームのような機能をメインにするものが多いと思います。

が、カラダじゅうに切り傷があって肉が見えている死体を前に笑っている主人公に感情移入はしにくいでしょう。「それはちょっと人間としてどうよ?」と、倫理的にもブレーキがかかりそうです。

完全に狙ってやっているように見えるので、チャレンジャーだなぁ、と思いました。

海外ドラマでは、こういう少し主人公に距離を置いた、三人称的なつくりかたは見ます。たとえば、「メンタリスト」(連続猟奇殺人犯に妻子を殺された元いんちき霊能者が犯罪コンサルタントとして殺人犯を追う人気ドラマ)とか。

でも、そういえば以前は、こういう主人公に感情移入しにくい物語は、「シャーロック・ホームズ」がわかりやすいと思うのですが、

  • 主人公は考え方も行動も、まるっきり普通じゃない
  • そのかわり、コンビで普通の人を横に置いて感情移入させる

という特徴があると思うのですが、比奈子のキャラクターは薄味で、食べ物にも飲み物にも七味唐辛子をかけるぐらいで、人に迷惑かけるようなキャラ設定はありません。シャーロック・ホームズは、麻薬常習者で人の迷惑とか全然考えないキャラです。

そして比奈子の隣はワトソン系ではなく、横山裕さん演じる、いつも怒ってる迷惑な先輩刑事で、これも感情移入しにくいです。ほかにも、感情移入できるキャラは見あたりません。

林遣都さん演じる心理カウンセラーにその役を担わせるのかなと思ったら、どうも怪しい雰囲気を漂わせて、感情移入を保留にしてくれました。

これは異常な人+普通の人のコンビではなくて、ひとりの人間で、いつもは普通だけど、ある一瞬だけ異常になる(比奈子の場合だと、殺人を見たときに喜んでしまう)という複層的なキャラクターに感情移入させようという、新しいドラマづくりなんでしょうか。それとも、全員に感情移入させそうでさせない、というあいまいなニュアンスで物語を引っ張るということなんでしょうか。

これはどうなのか、今後が楽しみです。

 

疾走する後半のドライブ感がいい

あるいは、感情移入させず、ストーリーで引っ張っていく、という決意があるのかもしれません。テンポがとてもよかったので。

前半はイメージビデオのように、印象的に比奈子の行動や殺人現場を見せていました。

中盤はコメディのように、要潤さん演じる先輩刑事がボケ倒していました。

後半はサスペンス色を強め、途中をどんどん飛ばして、ストーリーを疾走させていました。ボケ倒しの後に来たドライブ感はとても心地良く、カラダが少し浮いている感じさえしました。今書いていて、もう一度見たくなったぐらい。

見たら、プロットを抽出してみたいと思います。かなり強引に、ストーリーを語らずに省略していると思いますので、それがどこなのか知りたいところです。

実は中盤、このボケ倒しは必要なのかなぁと思いながら見ていたのですが、後半の体感スピードを増すためだったのだと納得しました。

 

殺人のスイッチってあるんでしょうか

さて、主人公の比奈子は、「殺人のスイッチ」に強い興味があり、第1話のクライマックスもそこでした。

たぶん第2話以降、いろいろな殺人のスイッチが出てくるのだと思いますが、今回はトラウマの記憶を呼び起こす五感がスイッチでした(ネタバレさせたくないので抽象的ですが……)。

ここが、単純化しすぎているような、でもこういう形にしないとつくりにくいような、ちょっともやもやした後味です。

自分自身の殺人のスイッチについても考えました。カッとなって喧嘩して過失致死、というのはない話ではないですが、最初から殺意を持って殺人をするスイッチというのは、どうなんでしょう。

自分が殺人を犯すとしたら、介護殺人でしょうか。母親を介護することになって、このままずっと介護の人生を送るのかという絶望に、過去の嫌な記憶を呼び起こすような言葉が加わって、スイッチが入るのかもしれません。

ニュースで出てくる介護殺人を同情して見てしまう自分がいます。

と、そんなカミングアウトはいりませんね。ここまで自覚しているので、避けるよう全力で努力するでしょうから。

 

そんなほの暗いことも考えてしまう、しっかりつくられたドラマでした。 

 

<終>