底辺から始めないところが平成風な 「バクマン。」
マンガ雑誌編集部を舞台にした「重版出来!」がとてもおもしろかったので、マンガつながりで、「バクマン。」を見てみました。
勉強も遊びも真剣にやってこなかった高校生2人がマンガ家を目指し、少年ジャンプで連載を獲り、ライバルである天才マンガ家と読者アンケート1位を競う話です。
これは原作の手柄なのかもしれませんが、まずマンガ家ものをスポ魂に仕上げるのが新鮮でした。「ずっと机に向かって描いてるシーンだと間がもたないだろうな」と思っていたのですが、マンガを描くシーンをフィジカルに表現して解決していました。
たとえば大きな筆を振り回してライバルと戦ったり、筆を刀に置き換えてみたり。脳内世界を白バックのバーチャル空間にして、そこでマンガを描くという行為を全身で表現してみました、という。卓球マンガの「ピンポン」と近い方向性のつくりだと思いました。
少年ジャンプの三原則、努力・友情・勝利はしっかり入っていて、役者もみんな確かな演技なので、楽しめました。
が、ひとつ気になったのですが、少年ジャンプというと、私のイメージは「キャプテン」で、ド下手の野球少年がバカにされながら、尋常じゃない努力を続けることで勝利する、という流れです。
それがこの作品は最初の「ド下手」がなくて、主人公は最初からジャンプの編集部に認められるし、高校生で連載が始められます。
しかも、ヒロインの美少女には最初から好きだと言われます。
そんなのアリか! という展開です。
エリートの戦い、という感じに見えて、主人公たちにはあまり感情移入できませんでした。感情移入しないと、どうしても心に残りにくくなるので、そこが残念でした。
でも、私がメインのお客さんじゃないだけで、みんな気にならないのかもしれない、とも思いました。私は底辺から上がっていくところが一番見たいのですが、プロになってからの戦いのほうが見たい人も多いのかもしれないですね。
そのほうが確かにクリーンでスタイリッシュなので、新しい感じはしますね。
私は昭和の人間だというオチでしょうか。
ナレーションがスパイの勉強になる 「バーン・ノーティス 元スパイの逆襲」
以前、「重版出来!」を取り上げた時に、「ナレーションは違和感がある」と書きましたが、ナレーションで心の声が出てきた瞬間に、興ざめすることが多いです。
と言いつつ、今回は逆に、ナレーションがあることで面白くなっている作品を紹介します。
私小説のようなナレーションのスパイもの
陰謀でミッションの真っ最中にクビになったスパイが陰謀を暴いていく、「バーン・ノーティス 元スパイの逆襲」です。
この作品は、シーズン1の第1話の出だしから心の声のナレーションが長めに続くという、小説のような作品です。が、ぜんぜん興ざめじゃありませんでした。まぁ興ざめする前に心の声なんですが。
たとえば、マフィアの用心棒たちに取り囲まれて銃を突きつけられている緊迫した最中に、
「トラブルが起こったら、笑ってごまかすしかない」
のような心の声ナレーションが、セリフより多いぐらいの割合で入ってきます。
このナレーションが面白いのは、心の声ナレーションはヘタレ気味なのに、行動は用心棒を容赦なく殴って、銃を奪ってとどめをさすようなハードボイルドなところです。そのギャップで、コミカル・アクションになっているんです。だから主人公が好感が持てるんですね。
このナレーションの使い方は新鮮でした。
スパイのハウツーものにもなっている
それから、心の声ナレーションは、スパイの仕事の進め方、たとえば手近な道具で爆弾の作り方を解説したりしてくれるんです。
心の声ナレーションなので、ナレーションを避けるためにセリフにしたり、相棒に教えるシーンをつくったりするより、話が早い早い。シナリオではとても嫌われる説明セリフでも、心の声ならぜんぜん問題ありません。
うまいこと考えたものです。心の声ナレーション、使ってみます。
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「ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子」 第4話
ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子 | 関西テレビ放送 カンテレ
死体を切り取ったり、殺してから椅子に座らせて冷凍したり、という猟奇殺人犯を追う新人刑事が主人公のサスペンス・ミステリー。
主人公の女性刑事、比奈子(波瑠さん)が、殺人現場でも「興味深い」と微笑んでしまう、感情のないキャラクターなのが興味深いです。
共感性の低い人は意外と多い、という確信犯!?
第1話を見たときには、「登場人物に感情移入させて興味をつなぐのではなく、ストーリー展開で引っ張っていくつもりなのかも」と思い、以前のブログに書いたのですが、2話、3話、4話と見進めていくうちに、違うのかもしれないと思いました。
話が進むごとに、比奈子のほうが殺人犯でもおかしくない、共感性の低いセリフがどんどん出てきます。
「生き物は(バラバラにすると)後始末が大変ですから」
「結果的に殺してみてもいいかと思っている」
と、なかなかのモンスターぶりです。犯罪者主人公のドラマなら今までもありましたが、正義というか良い人系の主人公でこういう「日常のモンスター」は見たことがないですね。
モンスターとは、「他人への共感性が低く、他人の思考回路からは理解できない行動をとる」ことを指すと思いますが、今まで見た作品は、前半の「共感性が低い」部分よりは、後半の「理解できない行動」をメインに捉えていました。
たとえば「脳男」。小説で江戸川乱歩賞を獲り、生田斗真さん主役で映画化もされました。あれは脳も感情もなく人を殺しまくる殺人鬼を追う話でしたが、脳も感情もないので、ロボットと同じ。逆に「理解できるはずがない」という理解の範囲内ではありました。
しかし今回の主人公は、感情は薄いけどあり、他人への共感性が低く、それを自分でわかっていて、なぜなのか、これからどうなるのか、不安に思っています。
この設定は新しいと思います。ただ、他人への共感性が低い主人公は、視聴者からも共感されにくいので、プライムタイムのドラマとしてはどうなんだろうと思っていたんです。
が、どんどん出てくるモンスター的発言を見ていると、「他人への共感性が低い人はたくさんいる」という確信犯で、このままで多くの人に感情移入してもらえるはずだと読んでいるのかもしれません。
比奈子と倉島との共感性対決が見たい
私も共感性が低いタイプで、そのことがコンプレックスとなっていて、人付き合いやら、仕事選びにまで影響してきています。
なので、今回の主人公を理解できます。私は共感性が低く、共感する場合は「普通はこういうものに共感する」という作られた共感なので、比奈子には共感できませんが。
実は今後、書こうと計画しているもののひとつに、「共感できない人間ってどうよ?」というテーマがあるのですが、この作品は先に形にしてくれた気がします。
去年、一度書こうと思って考えたことがあるんですが、そのときは「共感性が一番影響を及ぼす時=恋愛モノ」しか思いつきませんでした。しかし共感性の低い人間に恋愛モノはハードルが高く、コンクールに通るようなストーリーやキャラクターは出てこなかったので、先送りになっています。
この作品を見て、「共感性の低い人間を描くのに刑事モノにするのか!」と驚き、「やられた」と素直に感心しています。なので、しっかり参考にさせてもらおうと思います。
ただ、この作品のテーマは、「共感性の低い人間」というより、「誰の心にもあるモンスター」という方向に見えますので、どこまで「共感性が低い」ということを深めてくれるのかはわかりませんが。
それがどうなのかわかるのが、要潤さん演じる倉島先輩の扱いです。倉島先輩は、殺人現場を見ると吐いてしまい、被害者に対する「かわいそう」という言葉にも実感がこもる、共感性の高い人という位置づけです。しかし今は、比奈子のことが好きなために、変な行動をとってしまうボケ役になっています。
制作側に「共感性とは?」というテーマ意識があれが、共感性の高い倉島先輩と、共感性の低い比奈子にコンビを組ませて、もっと共感性を軸に突っ込んでくるように思います。
今後の展開が楽しみです。
熱いけど3人称ぽく少し引いたドラマ 「重版出来!」
万年2位のマンガ雑誌編集部を舞台に、黒木華(はる)さん演じる黒沢が個性の強い漫画家と、会社につきものの大人の事情に振り回されながら成長していくお仕事ものドラマ。
かなり楽しめました。歴代ベスト10に入りますね。
目線主役は編集、ストーリー主役はマンガ家
前向きで、なんでも楽しんで突進する黒沢が、持ち前の明るさと根性でトラブルを乗り越えて行く、と書くと根性モノのように聞こえますが、実際にはその体裁をとりながらのクリエイターものと言えます。
制作側は創作の苦しさとか楽しさを描きたかったんだろうと思えます。
というのは、目線上の主役は黒沢であり編集部なのですが、ストーリー上の主役、物語の核になるのは、マンガ家側で、主人公は話から消えてしまっている回もあります。
これ、編集部のメンバーのキャラをもっと立てて、マンガ家側を受け役にすることもできたと思うので、マンガ家をストーリーの主役にするというのは、意図されたことでしょう。
それだけあって、マンガ家たちはキャラが立ってます。
純文学のように心に湧いた映像をマンガにする、絵の下手な中田伯(永山絢斗さん)、そして人柄はいいが自分の才能に疑問を感じているアシスタントの沼田渡(ムロツヨシさん)の二人は特にいいですね。
そういえば、主役の黒沢のことよりも、中田や沼田のほうが人物像が描かれています。家族のこととか、どういう生活をしているかとか。ハリウッド系の脚本術の本で、「ラウンド・キャラクター(その人の全体を描く)」と「フラット・キャラクター(その人のある一面を描く)」という言葉が出てきます。主役をラウンドで描いて、脇役をフラットに描くのが普通ですが、このドラマは逆ですね。沼田の部屋とか食べてるものは知っているけど、主役である黒沢の部屋は知りません。
こういう描き方をして、でも黒沢が主役だと感じさせるには、かなり綱渡り的なつくりが必要だったことと思います。
最終回のラストのクライマックスも黒沢の話ではなくて、小日向文世さん演じるマンガ家の三蔵山先生のスピーチでしたし……。このスピーチが良くて、もっと年取ったら、このスピーチ盗もうと思いました。いいです、10回ぐらい見ました、このスピーチ。
1人称で抱きつくか、3人称で握手するか
この作品を見ていると、同じマンガ業界を描いたドラマで、「アオイホノオ」を思い出しました。
「アオイホノオ」は、テレビ東京系の連ドラで、なんの実績もないのに自分は天才だと勘違いしまくった漫画の卵が、周りにどう思われようが関係なく突っ走る話です。あの作品も面白かったです。
が、超自分目線で客観性ゼロの1人称ドラマだったので、最初は爆発的に面白かったものの、多少中盤から飽きを感じることもありました。
そう考えると、この「重版出来!」は、話の主役はマンガ家なんだけど、目線の主役は編集者、という構図で、3人称的で、少し引いたつくりになっています。3人称なので、描く人を変えられるので、それで興味が続きやすくなっていたんでしょう。
まぁ、「アオイホノオ」の初回、2回目あたりの吸引力にはものすごいものがありますが。初対面なのに思いっきり抱きつかれたような唐突感とパワーがありました。
それに比べると、「重版出来!」は握手ですが、長く続く温かい握手です。
ナレーションってどう思われているんだろう?
見ていて気になったのは、ナレーションがけっこう出てくること。主役の黒沢のナレーションはなかった気がしますが、オダギリジョーさん演じる先輩編集者(めちゃくちゃカッコイイ)や、松重豊さん演じる編集長の心の声がナレーションでちょこちょこ、しかも結構重要なシーンで出てきます。
ナレーションが始まると違和感を感じる私としては、気になりました。絵で見せてよ、という。たとえば9話で、オダジョーが夜道を歩きながら「妻に捨てられたとき~~」のようにナレーションが入るんです。これはその後のオチの大事な前振りになっている重要な部分なので、妻に捨てられたときの光景をフラッシュで見せるとかしてほしかったです。
そうしようと思ってたけど、予算と時間という大人の事情で、なのかもしれませんが。
でも結構ほかのドラマでも心の声ナレーションを耳にしますから、あまりみなさん気にしないのかもしれません。どうなんだろう?
このドラマとは関係ないですが、今までで一度だけ、心の声ナレーションで「やられた」と感動したことがありました。細部は忘れましたが、10年ぐらい前の「シティボーイズ」の公演(ライブと言うのかな)でした。
大竹まことさんが1人で困っているコントで、暗転すると舞台右上にスポットがあたり、キューピッドっぽい衣装を来た斉木しげるさんが立っていました。「これは主人公の心の声だな、なんて言うんだろう」と楽しみにしていたらいきなり、「こんにちは、私は心の声です」とハイテンションで叫んで、主人公の心をベタにしゃべり出しました。
会場全体が大爆笑で、あれには完全にやられましたね。
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主人公の周りは敵だらけ 「営業部長 吉良奈津子」 第1話
営業部長 吉良奈津子 | オフィシャルページ - フジテレビ より
広告代理店のエースCMクリエイター、奈津子(松嶋菜々子さん)が、結婚して出産し、産休を3年間とって仕事に復帰する。すると、部署は制作ではなく、営業のお荷物部署だわ、後輩のほうが出世しているわで、なかなかうまくいかないが、バイタリティーで突破していく、という話のようです。
最初、設定だけ聞いたら、えらく地味だな、脚本が井上由美子さんだから通ったのかな、と思ったんですが、なかなか面白かったですね。
きっちりしっかり主人公いじめ
面白かったのは、主人公を甘やかしていなかったからでしょう。
奈津子自身は「自分はやれる」と思っているのに、「3年もブランクあったら使い物にならんだろ」とはっきり言われ、仕事はその通りにうまくいかない。部下の目も冷ややかで、仕事を頑張れば頑張るほど、帰りが遅くなって唯一の味方である家族ともぎくしゃくしてしまう。
クライアントには「あんたには一生仕事は出さん」とまで言われるなどなど、なかなかヘビーな状況です。
私も、産休ではないものの、少しブランクがあって、ブランク前と今のギャップに苦労しているので、しっかり共感しながら見ていました。
もう第2話以降で出てくる敵も確定していますし、絶対甘やかさない!という強い意志を感じます。
ストーリーのエンジンはなに?
しっかりいじめられた主人公の逆襲はこれからになりそうですが、それが何なのか、気になります。
仕事の成功なのか、仕事と家事の両立なのか。仕事の成功とは売上げを伸ばすことなのか、出世なのか、営業からクリエイティブ部門に戻ることなのか、いろいろあるので、どれで来るのでしょうか。
奈津子の部署はお荷物で、数カ月後に取りつぶしになる予定、という時限爆弾は埋め込まれました。その間に売上げ○億円上げないとクビ、とかいう設定になりそうな雰囲気がします。
全10回ほどを、その時限爆弾だけでひっぱるのは無理があるので、そこをどうするのかにも興味があります。
第1話を見る限りでは、最初は冷ややかだった周囲も、奈津子のバイタリティと子育てで成長した人間力を見て、協力者に変わっていくという流れで、それで10話通すのでしょうか。
刑事モノだと、1話に1事件という1話完結型で、特に大きな目的というか、行き先がない場合も多いですが、お仕事モノなので、何かほしいところです。あまり思いつきませんが……。
デフォルメで派手になる
面白かったですが、設定は地味でストレートではありますね。個人的な好みで言うと、どこかをデフォルメして設定を派手にしてもいいのでは、と思いました。
営業部長ではなく、子会社の社長とか。まだ地味か。
テーマに関わるところで、話が盛り上がるデフォルメをしたいところですが、口惜しいことに私はこのドラマのテーマとかツボがつかめてないですね。
今後しっかり見てつかんでみます。
演出がしっかりしていて、自然に見られるので、見続けそうです。
「ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子」 第1話
NHKの朝ドラ「あさが来た」で人気を集めた、波瑠さん主演の刑事ドラマ。
殺人者が人を殺すことになるスイッチを探す新人刑事・比奈子を主人公に、猟奇殺人を犯す異常犯罪者を追う、サスペンスタッチのミステリーで、被害者の死体がエグく、ホラーも入っています。
その手の映像がダメな方は目をつぶる時間が長そうな第1話でした。
主人公に感情移入させない新しい手法!?
2時間スペシャル(正味は1時間半)と映画ぐらい長かったですが、とても楽しめました。
一番興味深かったのは、主人公のキャラクターです。
比奈子は血だらけの殺人現場でも落ち着いていて、笑顔を見せたりします。仲の良い親友の死体を前にしても、楽しそうに見えるぐらいです。
一般的にドラマは、主人公に感情移入してもらい、主人公と一緒に笑ったり泣いたり怒ったりするのを楽しむという、シミュレーション・ゲームのような機能をメインにするものが多いと思います。
が、カラダじゅうに切り傷があって肉が見えている死体を前に笑っている主人公に感情移入はしにくいでしょう。「それはちょっと人間としてどうよ?」と、倫理的にもブレーキがかかりそうです。
完全に狙ってやっているように見えるので、チャレンジャーだなぁ、と思いました。
海外ドラマでは、こういう少し主人公に距離を置いた、三人称的なつくりかたは見ます。たとえば、「メンタリスト」(連続猟奇殺人犯に妻子を殺された元いんちき霊能者が犯罪コンサルタントとして殺人犯を追う人気ドラマ)とか。
でも、そういえば以前は、こういう主人公に感情移入しにくい物語は、「シャーロック・ホームズ」がわかりやすいと思うのですが、
- 主人公は考え方も行動も、まるっきり普通じゃない
- そのかわり、コンビで普通の人を横に置いて感情移入させる
という特徴があると思うのですが、比奈子のキャラクターは薄味で、食べ物にも飲み物にも七味唐辛子をかけるぐらいで、人に迷惑かけるようなキャラ設定はありません。シャーロック・ホームズは、麻薬常習者で人の迷惑とか全然考えないキャラです。
そして比奈子の隣はワトソン系ではなく、横山裕さん演じる、いつも怒ってる迷惑な先輩刑事で、これも感情移入しにくいです。ほかにも、感情移入できるキャラは見あたりません。
林遣都さん演じる心理カウンセラーにその役を担わせるのかなと思ったら、どうも怪しい雰囲気を漂わせて、感情移入を保留にしてくれました。
これは異常な人+普通の人のコンビではなくて、ひとりの人間で、いつもは普通だけど、ある一瞬だけ異常になる(比奈子の場合だと、殺人を見たときに喜んでしまう)という複層的なキャラクターに感情移入させようという、新しいドラマづくりなんでしょうか。それとも、全員に感情移入させそうでさせない、というあいまいなニュアンスで物語を引っ張るということなんでしょうか。
これはどうなのか、今後が楽しみです。
疾走する後半のドライブ感がいい
あるいは、感情移入させず、ストーリーで引っ張っていく、という決意があるのかもしれません。テンポがとてもよかったので。
前半はイメージビデオのように、印象的に比奈子の行動や殺人現場を見せていました。
中盤はコメディのように、要潤さん演じる先輩刑事がボケ倒していました。
後半はサスペンス色を強め、途中をどんどん飛ばして、ストーリーを疾走させていました。ボケ倒しの後に来たドライブ感はとても心地良く、カラダが少し浮いている感じさえしました。今書いていて、もう一度見たくなったぐらい。
見たら、プロットを抽出してみたいと思います。かなり強引に、ストーリーを語らずに省略していると思いますので、それがどこなのか知りたいところです。
実は中盤、このボケ倒しは必要なのかなぁと思いながら見ていたのですが、後半の体感スピードを増すためだったのだと納得しました。
殺人のスイッチってあるんでしょうか
さて、主人公の比奈子は、「殺人のスイッチ」に強い興味があり、第1話のクライマックスもそこでした。
たぶん第2話以降、いろいろな殺人のスイッチが出てくるのだと思いますが、今回はトラウマの記憶を呼び起こす五感がスイッチでした(ネタバレさせたくないので抽象的ですが……)。
ここが、単純化しすぎているような、でもこういう形にしないとつくりにくいような、ちょっともやもやした後味です。
自分自身の殺人のスイッチについても考えました。カッとなって喧嘩して過失致死、というのはない話ではないですが、最初から殺意を持って殺人をするスイッチというのは、どうなんでしょう。
自分が殺人を犯すとしたら、介護殺人でしょうか。母親を介護することになって、このままずっと介護の人生を送るのかという絶望に、過去の嫌な記憶を呼び起こすような言葉が加わって、スイッチが入るのかもしれません。
ニュースで出てくる介護殺人を同情して見てしまう自分がいます。
と、そんなカミングアウトはいりませんね。ここまで自覚しているので、避けるよう全力で努力するでしょうから。
そんなほの暗いことも考えてしまう、しっかりつくられたドラマでした。
<終>